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労働基準監督署の臨検で適正な労働時間の管理が不十分との是正勧告を受けた

ご相談内容(サービス業A社)

A社では時間外労働の際、事前申請と管理職の承認をルールとしています。
定時で仕事を終えることが難しい場合には、時間外労働を行う仕事の内容と所要時間を申請し、管理職の承認を得ることにしています。
実際の労働時間は翌日に管理職が確認し、必要があれば修正していましたが十分なものではありませんでした。従業員が時間の超過を申し出なかったり、事前申請せずに働いていたりしたケースが散見されました(時間外労働の申請・承認書の作成なし)。
また、退社時の「打刻忘れ」も散見され正確な労働時間の把握が行われていませんでした。
労働基準監督署からは、過去6ヵ月のタイムカードの記録に基づいて従業員へ実態調査を行うことや、その調査結果と改善策について報告することを求められました。また必要に応じて従業員に割増賃金を支払うよう指導・是正勧告がなされました。
そうした経緯から、弊所へ今後の改善策について相談がありました。

ご提案内容

  1. 出社・退社時のタイムカード打刻の徹底を図る。打刻忘れが無くなるまで従業員へ指導し続けること。
  2. 残業をしなければならない時は、必ず「時間外労働の申請・承認書」を管理職に提出の上、残業の必要性・所用時間の確認および承認を受けること。
  3. 管理者も「時間外労働の申請・承認書」の提出がないまま、時間外労働を行うことについて黙認(黙示の指示)をしないこと。
  4. 「時間外労働の申請・承認書」の残業終了時刻に対してタイムカードの打刻時刻が30分以上遅くなるような乖離がある場合は、その理由を申請・承認書の備考欄に記載すること。その理由が同僚との談笑、休憩等であっても、理由の記載がなければタイムカードの打刻時刻が残業時間と見做されることになります。今後については、無用な割増賃金を発生させないためのルールを徹底するなど、労務管理の重要性を十分認識すること。
  5. 業務終了後は速やかに退社させること。 
  6. 残業が常態化している部署や従業員がいる場合は、ダラダラ残業、付合い残業の有無等の確認と共に、業務の効率化(多能工化等)を検討し実行すること。

上記により、「打刻忘れ」や「時間外労働の申請・承認書」の残業終了時刻とタイムカード打刻時刻の乖離理由の記載は改善されました。

事業合理化による支社の廃止に伴う従業員の整理解雇

ご相談内容(機械製造業B社)

B社(機械製造業)のX支社は、所在地周辺の営業拠点として支社単独で僅かながら黒字を確保していました。しかし最近は営業人員の確保ができず取引先も減少傾向で先細り感が否めないことから、今後は黒字の確保が厳しい見通しとなっていました。そのためX支社を廃止して合理化・効率化を図る必要があるため、X支社の従業員全員を整理解雇する検討を行っていました。
以上の内容を踏まえてB社から整理解雇の問題点についての相談を受けました。
なお、B社の財務状況は毎期黒字を計上しており、業績は順調に推移しています。

ご提案内容

今回のケースは、X支社の業績が現在は僅かに黒字であるが、経営環境は厳しく収益は低下傾向。その他の事情も考慮して、B社全体の経営合理化を目指してX支社を廃止するものです。その際に問題になるのが「従業員の解雇問題」です。安易に整理解雇を行うと不当解雇であるとして労働者から訴訟を提起されるリスクがあります。
整理解雇はB社の一方的な事情により行う解雇ですから、次の4つの要件に照らして整理解雇の有効性について厳しく判断されます。しかし、最近では必ずしも4要件のすべてを充足することを必要としない判例も出されています。この前提に基づき、厳しく一要件ずつ検証を行いました。

整理解雇の4要件(一般的な判断基準)

①人員削減の必要性

人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること

②解雇回避の努力

配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと

③人選の合理性

整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること

④解雇手続の妥当性

労働組合または労働者に対して、整理解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと

問題点

①人員削減の必要性

X支社の経営環境は厳しさを増しており、主要な取引先が減少しています。近いうちに赤字に陥る可能性がありますが、現在のところ黒字を確保しています。
黒字企業のB社が合理化・効率化を図るために黒字のX支社を廃止し、社員等の整理解雇を行うのは不合理と解される可能性が大きいと考えられます。
「必要性」の要件は最も重要なもので、将来の危機回避や単なる生産性向上という目的では足りず、廃止・リストラをしないと倒産する危機が大きいとか、経営状態の悪化等合理的で、やむを得ない必要性でなければなりません。

②解雇回避の努力
  1. 社員に対してX支社閉鎖に伴い本社への配置転換を促して、それに伴う住宅手当・勤務地手当を支給し、従来の所得補償および雇用の維持を図ります。
  2. 会社として再就職の支援を行う。ハローワークへの求職相談、産業雇用安定センターへの登録、B社既取引先への就職の斡旋等を誠実に行います。
③人選の合理性

X支社の従業員全員を整理解雇するため不該当。

④解雇手続の妥当性
  1. 本社の管理者(担当役員・担当部長)が、従業員全員と直接面談を行い、支社廃止の経緯、それに伴う本社転勤の要請、住宅手当・勤務地手当の支給、再就職の支援等について誠意をもって真摯に説明し理解を求めます。
  2. 従業員からの質問・反発に対しては、何回でもX支社に責任者が訪問して、誠意ある対応を行います。

結論として①の「人員削減の必要性」において、黒字企業、黒字支社の現状を鑑みれば、解雇の有効性の判断において認められない可能性があります。B社としてはあくまでも「円満解決」を目指し、誠意をもって真摯に話し合うことを基本的な考え方としています。しかし、従業員の理解・納得が得られないことも予想され、長期にわたる従業員との争いを考慮すれば会社の負担が大きくなるため、ある程度の譲歩は避けられないと考えられます。最終的な決着としては、従業員との話し合いの場を持ち、何らかの形により妥協点を探ることが必要になることをお伝えしました。

従業員との連絡がつかず音信不通

ご相談内容(建設業C社)

C社の従業員が、会社および担当の上司に連絡することなく無断で欠勤するようになりました。C社から電話連絡を行ったが応答がなく、音信不通の状態となっていました。配偶者や親族の存在については不明。そこで、今後の対応についてC社からご相談を受けました。

ご提案内容

  1. 継続して電話・メール連絡を続け、応答がない場合はその旨と日時を記録しておく。
  2. 総務部長自らが自宅を訪問し、不在の場合は訪問の事実として名刺等をポストに入れる。上記の①および②を継続して行い、不在の場合にはその旨と日時を記録しておく。
  3. 上記の対応を行っても、本人からの連絡がない場合は、会社への出社命令通知(出社日・時刻・出社場所等を記載)を郵送する。
  4. 社員が行方不明になったまま連絡が繋がらない場合は、就業規則に則して退職手続きを行う。
  5. 解雇の場合は本人に対して「解雇通知」を行いますが、この場合、解雇の意思表示を行方不明となっている従業員に到達させる必要があり、この通知を配達証明付き内容証明郵便で送付したとしても、本人が内容を読んだという証明にはならないので、解雇通知の効力は有効となりません。
  6. 法的に解雇の意思表示を到達させるためには、公示送達の手続きが必要になります。しかし、この手続きは大変な労力を必要とします。したがって、会社の就業規則で一定期間行方不明であることを理由として自然退職とします。
  7. 今後、同様の事例が発生した場合に対応するため、就業規則の「退職」の項目について修正を行いました。

従業員が勤務時間外に窃盗罪で逮捕

ご相談内容(飲食業D社)

D社のY従業員が勤務時間外(深夜)に窃盗罪で逮捕され、会社の対応について相談を受けた事案です。

逮捕後の状況

  1. 逮捕事実およびY従業員の名前は新聞に掲載されましたが、D社の名前は掲載されていませんでした。
  2. Y従業員は現在、警察署にて余罪の追及もあり勾留延長請求され、しばらくの間面会できない状況でした。
  3. D社の他の従業員から、今後Y従業員とは仕事をしたくない、いつ頃会社に出社してくるのか等の問い合わせがあり、他の従業員が不安感を持っていました。

D社からのご相談

  1. 今後、会社秩序維持のためY従業員が出社するのは困る。解雇できないか?
  2. 健康保険料の支払いはどうすればよいのか?

ご提案内容

会社の対応

①犯罪行為の事実確認
  1. 本人が窃盗の事実を認めている場合、犯罪事実に対する従業員の意見、今後の社内での扱いに関することなどをヒアリングすること(本人と面談ができれば、自主退職の意思確認を行う)。
  2. 本人が窃盗の事実を認めていない場合は、誤認逮捕の可能性も否定できないので、本人が嘘をついていると決めつけないこと。
②解雇について
  1. 逮捕されたからと言って、いきなり解雇をしてしまうという安易な対応を行うことは問題があります。
  2. 逮捕された事実が、勤務時間外の非行であれば、会社とは関係のないことであり、懲戒処分の対象になりません。
    しかし、勤務時間外の非行であっても、会社の秩序を乱す場合や企業の社会的評価を毀損する場合には懲戒事由となることが認められています。
  3. 従って、懲戒処分は状況に応じて慎重に対応することが重要です。
③健康保険料の支払い
  1. 健康保険の場合、逮捕・勾留中の本人は、健康保険を利用することはできません。国の負担で医療を受けることになります。
    しかし、本人の被扶養者は、健康保険を利用することができます。
  2. 健康保険法第118条1項
    「被保険者又は被保険者であった者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、疾病、負傷又は出産につき、その期間に係る保険給付(傷病手当金及び出産手当金の支給にあっては、厚生労働省令で定める場合に限る。)は、行わない。」

健康保険の場合、届出により保険料を支払う必要がなくなります。詳細については年金事務所でご確認ください。

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